木造住宅の耐震改修 プチメモ
先日、将来的に予想される首都直下地震の最大予想震度が、今までの震度6強から震度7に見直され、都心の震災対策も見直しを行なうとのニュースもありました。
東日本大震災や、東海や東南海で予想される大地震、1923年の関東大震災などは、太平洋沖を震源としたいわゆる海溝型の地震ですが、ここで挙げられている東京周辺の直下型地震は、その名の通り都心部の内陸を震源としたもので、関東大震災などとは別のもの。これも今まで一定年数ごとに起こってきたわけで、将来的にも再ひ起こることは間違いないでしょうから、対策はしっかりとして頂きたいなと思います。
さて上の写真は、前回の講習の後に受けた「木造住宅の耐震改修に関する技術講習会」の様子。こちらの講習会の方が、耐震診断ではなくて耐震改修の実務的な内容が多かったです。
ということで、数日前にアップした、耐震診断・耐震改修の講習会などの内容もふまえ、木造住宅の耐震改修をについて、概要や私なりのメモなどをいくつかお書きしてみます。
●木造住宅については、度々法改正が行われていますが、昭和56年に、現在も使われている新耐震基準になったので、それ以前に建てられた木造住宅は現行の耐震性能を満たしていない可能性が高く(だからと言って全てが危険というわけではないですが)、耐震診断や耐震改修を行なうことが望まれます。
(ただし木造住宅の場合は、建築確認が不要であったり、工事完了後の行政検査を受けないで済むような時期や場所があったりなど、適法に設計や施工がされているかのチェック機能がなかったケースも多くあります)
●その他、法改正によって、以前の木造住宅と現在のそれとでは、耐震面では主に以下のような違いがあります。
○筋交や構造用合板などの「耐力壁」の量が増やされています
○ほとんどの場合、基礎は鉄筋の入ったコンクリート(鉄筋コンクリート)でつくるよう
になっています
○柱が梁、基礎がそれぞれバラバラにならないよう、必要な接合金物を入れるよう
定められました
○上記「耐力壁」が平面的に偏らないよう、バランス良く配置するよう定められました
●耐震改修は、
○耐力壁を増やす
○柱や筋交などに接合金物を取り付ける
○腐ったり白アリに食われた構造体部分を交換する
○床を補強をする
○基礎を補強する
などを必要に応じて行ないますが、耐震補強のみだと行なうきっかけがつかみづらいもののようです。ですので、間取りや内装、断熱など大規模にリフォームする場合に一緒に行なったり、水回りだけなどのリフォームでも、その近辺の構造体の点検や補修ができる場合には耐震面でも改修をしていく、などが良いようです。耐震改修も、安価に行なえる場合もあります。
●木造住宅などの場合は特に、地震で倒壊する場合には、柱や梁が真ん中で折れたりするのでなく、柱と梁、基礎などとの「接合部」がはずれたり変形したりすることが原因であることが多いです。接合部は、経年変化や大きな地震を経験するたびに弱くなりますので、「あの地震で大丈夫だったから今後も大丈夫だろう」とは言えない面があります。
●現行の建築基準法は、おおむね震度6強や7程度の地震でも「倒壊しない」(部分的な「損壊」はあり得ますが、「倒壊」しなければ人命が損なわれる可能性は低いだろうということ)レベルを基準としています。現在では、さらにその強度の1.25倍、1.5倍など、建主が強さを選択することもできます。ただし、特に在来木造は、「構造的にこうするのが当たり前」な事柄の中で、法律として義務化されていない部分もありますので、単に適法だから、耐力壁の量が多めだから安全というわけでもありません。例えば地震に強い間取り・弱い間取りなどもあります。これらは、建築士や構造設計者、大工さんなどでも、知識や経験にかなり個人差があります。
●耐震や構造は、通常の設計や施工でも一定の安全性は比較的簡単に確保できるのですが、一般の方にはわかりづらいためか、高額な製品があたかも必要なように売られたり、必要以上に不安をあおったり、新しい法律の下で建てて倒れるはずもないのに「わが社の家はこの地震で1棟も倒れませんでした」などと誇大な宣伝がなされたりなど、正確な情報の把握が難しい分野であるかも知れません。あくまでも冷静に、必要に応じてしっかりとした手段で診断をしてもらい、コストとのバランスも考えながら、必要に応じた改修を行なうように気をつけたいところです。
とりあえずこんなところで。
最後にこの写真は、新潟中越地震の際に撮影した、「損壊したけれど、倒壊していない」という例です。揺れによって柱と梁の接合部が変形し(地震が終わってほぼ元の状態に戻っていますが)たために、それを覆っている外壁がはがれたと考えられる事例です。
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