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2007年12月 1日 (土)

ディテールはやっぱり楽しい

 ここ数日、進行中物件のディテールを描いています。ディテールとは、「詳細」などの意味ですが、建築では「納まり」とほぼ同義で、その「納まり」とは、「現場で取り付けられるさまざまな部材の組合せの具合のこと。美観的にも機能的にもきちんと整っていることを「納まりがよい」という」(『建築現場用語辞典 井上書院』)という意味です。言い換えれば、多くの材料を使って作られる建物の各部分を「どのようにするのか」、コストや工期がどのくらいかかるのかを考慮しながら、デザインも良く、雨漏りや防音、遮熱、耐久性などの様々な面での性能をどの程度満足させられるレベルにするのかを決定して、それを図面化して施工ができるようにしていくというのが、ディテールを描くという作業です。

 ひとつ例を挙げると、ディテールを決めるというのは、床の間の作り方にも「真行草」などがあるのを聞いたことがあるかも知れませんが、それぞれ手間の掛け方、デザインなどに違いがあり、そのどれにするかを決めて設計して行く過程、ということです。人によっては、「建物の美しさは、プロポーションとディテールで決まる」という人もいますし、ディテール専門の書籍もたくさんありますので、建築にとってとても大切な概念のであることがわかります。メディアに登場するような建築家の大先生は、デザインの力がもちろんあって、一般の方や学生さんなど、憧れの的になっている方も多いですが、多くの立派な建築家の先生は、ご自身で考えているか、所員の方が考えているか、メーカーに考えさせているかの違いはあれど、表面的なデザインだけでなく、性能に裏打ちされたディテールを、きちんと検討されています。

 ですが、多くの一般の方には、素材の性能やコストなどはいろいろ勉強をされている方も多くなりましたが、このディテールの部分にまでこだわって評価をされる方はなかなかいらっしゃらないのが現状のようです。最低限の美観と性能を有していれば、あまり気にすることもない面もあるからでしょう。ですので逆に、設計や施工をする側からすると、コストや性能の面で、一般の人にわかりづらいように「らくちん」をするには、この納まりの部分で手間を省くことも、ポイントのひとつになってしまいます。出来た当初はわからなくても、同じようなものと見比べたときに、そして長年経つうちに、その差が明らかになってくる、というような、結構地味な部分なのかも知れません。でも、そういう部分にプロのプライドを持って取り組んでいる人たちもたくさんいます。

 納まり、ディテールというのは、学校ではほとんど教えてくれない傾向にあります。建物の設計等は、一般の方と同じように、デザインや間取りなど、建物の大枠から勉強していくのが普通で、それなりに実務をこなさないと、どういった材料がどのような性質を持っていて、どのくらいの値段なのかなどは、なかなかわからないため、納まりの検討ができないためだと思われます。ですので、学校を卒業して就職して、現場の人たちに若い設計者らがまず言われるのが、「この図面のこの部分、どうやって納めるの?」です。 相手も、こちらがわからないであろうことを見越して、いじめて楽しむ、もしくはこちらの力を試しているところがあります(笑) そうした苦労をし、恥をかきながら、みんな頑張って仕事を覚えていくものなんだろうと思います。

 話がそれましたが、私もまだまだ精進が必要な身ではありますが、ディテールを考える際に、年々、いろんなバリエーションが浮かぶようになってきた気がしますし、満足のいくものが描けるようになってきたような気もしています。ほんの少しずつかも知れませんが、成長しているのかと思うと、ちょっと嬉しくなります。それでも施工屋さんに描いた図面をぶつけると、「これじゃあ、ここがダメだよ」とか「こうしたいのなら、ここをこうした方がいい」などと言われて、納得させられてしまうことも多々あります。そうしたことを繰り返しながら、さらに良いものを考え出せるようになりたいと思います。

 納期までまだ日にちはあるのに、夜になっても何だかディテールのアイデアが湧いてきて、思わずCADを立ち上げてしまい、早く寝た方が良いのに作業を始めてしまって、気付くと2時、3時などの日が多くなっています。次の日が辛かったり大変ではありますが、決して悪くない、充実した日々です。こうした建物のディテールについての具体例も、ここに少しずつ書いて行けたらいいなと思っています。

 

 

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