『ドライミスト』講演会
今日、日本建築学会群馬支所の講演会が、前橋工科大学で行なわれたので行って来ました。講師は、工科大の関口正男先生、内容はドライミストでした。
ドライミストは、2年前の愛知万博で公式採用された、「微細な水の粒で人工的な霧を発生させて、水が液体から気体に変わる際に周囲から熱を奪う気化熱を利用して、周辺の気温を下げるシステム」です(ただし「ドライミスト」とは、能美防災の登録商標だそうです。でも会社へ問い合わせをすると、「使っても良いですよ」的なことを言われるそうな)。私も愛知万博へ行きましたが、終了間際の9月で、駆け込みのお客さんでごった返していた上に、うだるような猛暑で、各所に設置されたドライミストで、ほっと一息つかせてもらいました。ドライミストは、冷却範囲はわずかなようでしたが、その下に行くと、本当に涼しく快適だったのをよく憶えています。
ドライミストは一般的に、クーラーの1/30の消費電力で清涼感が得られる、エコロジカルな冷却装置として愛知万博以降注目され、最近は、都内の公共スペースにも設けられたりしているようです。私も興味津々です。
講演が始まる前に、学校の庭で実際の装置のデモンストレーションも行なわれていました。ただ、今日は雨模様で、気温も低めだったため、涼しさを実感するには至らなかったのが残念でした。
講演の内容としては、ドライミストの効果などに加え、霧の大きさや、霧を噴出するノズルの種類、冷却作用や装置の騒音の実験データの紹介など、基礎的な仕組の部分をしっかりと解説して頂きました。テレビで見かける東京理科大の辻本先生などは、一流体ノズル、関口先生は二流体ノズルを開発しているそうで、今日は、二流体ノズルについての説明が多かったです。それぞれに長短があり(詳細を書き出すと長くなるので割愛です)。これらの違いは、研究者の考えというか、こだわりの違いなのだそうです。
特に新鮮だったこととしては、ドライミストが、冷却装置としてだけではなく、例えば、キノコ栽培において加湿装置として利用されている(従来、水を撒くことなどが多かったそうですが、レジオネラ菌などの発生の恐れがあったそうです)ことや、水道水を撒く場合に、塩素消毒によるトリハロメタンなどが撒き散らされないよう、フィルターを通してから水を噴霧している、などがありました。いろいろな分野での活用がまだまだ考えられるようです。それと、今まで私は、霧の粒子が小さいために「(ノズルから服に到達するまでに蒸発してしまって)濡れない」のだと理解していたのですが、水の表面張力により、水の粒が微細であれば、服に当たっても粒が跳ね返って服が濡れないというのもあるんだそうです。なるほど~。さらには、ドライミストの効果として「演出装置としての役割」が挙げられる、風に左右されやすく、特定の冷却範囲を狙うのが難しいなどのお話もありました。また、最近ドライミストがもてはやされていることで、有効でない利用方法が見られたり、それをそのまま報道されたりしていることが見受けられるとのことで、「このシステムは、日陰で有効なのであって、直射日光が当たるところで霧を噴いても効果が薄い、また地下鉄のホームなどで利用されるケースもあるようだが、熱には顕熱と潜熱があり、地下鉄などの比較的閉鎖的な空間で使用すると、湿度が上昇し潜熱があがるため、エネルギー効率が発揮できない」と指摘されていました。なかなか難しい・・・。
おおよそこんな感じで、いろいろなお話を聞けて、大変有意義な講演会でした。ドライミストは最初に書いたように、水蒸気が蒸発する際に、周囲の熱を奪うという気化熱の原理をもとにして開発された装置です。気化熱で涼を得ると言えば、昔よく見られた「庭や道路への打ち水」や、「木陰が涼しい(植物の蒸散作用)」なども思い起こされます。こうした、自然が持っている機能や、人々が昔から経験的に行なってきたことを見つめ直して現代の問題に対処していくのも、有効である場合がやはり多いようです。また屋外の公共空間のみならず、住宅向けの装置も開発が進んでいるようなので、今後も注目だなと思いました。いずれにしても、ドライミストは体にも環境にも気持ちいい~ようです。
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