小学校からの同級生が、実家の隣の土地と中古住宅を買うことになり、ちょっと一緒に見てくれと言われて、先週末に行ってきました。築29年になるそうで、つくりは確かに建築された年代を思わせ、仕上には、長年使われてきた中でついた汚れや傷みも目に付きました。でも、ザッとみたところ、屋根もしっかりとしていて、壁などに大きな傾斜が見たれたりすることもなく、まだまだ住み続けられそうな家でした(3年前に、新潟中越地震で応急危険度判定に行ったのも役に立ちます)。壁のクロスを貼りかえるなど、簡単なリフォームをして生活を始めるそうです。
先日、福田首相が「200年住宅」との構想に言及したことが報じられました。簡単に建て替えてしまって廃材などを増やすことは、もちろん、リサイクルできたり環境にやさしい材料を使えば良いとの意見もありますが、地球環境の持続性から極力抑えた方が良いわけなので、基本的には私も賛成しています。しかし、それに関連して「おいおい!」と思うことがありました。そのニュースを読んでいたアナウンサーが、「木造住宅の寿命は約30年と言われますが・・・」と言っていたのです。
このことは、お客さんとお話しているときによく話題になるので、その都度ご説明をしているのですが、
「木造住宅の寿命が30年」というのは、大きな間違いです!
でも、私たち建築に関わる仕事をしている人の中にも、そう認識している人がいるので、一般の方がそう思っていても仕方ないのかも知れませんが・・・。
この木造の寿命の話は、「木造住宅が取り壊されるまでの平均年数が約20何年だ」という統計調査に端を発しています。これは確かに事実なのです。でも、実はどのようなきっかけで家が取り壊されるのかというと、「寿命」と呼ばれるような、「このまま住んでいると危ないんじゃないか」というような状態になったからという理由もありますが、「子供が結婚して同居する。今の家では手狭だから、どうせだから2世帯住宅を建てようか」、「子供が大きくなって、自分の部屋が欲しいというけど無い」、「今まで広い家に住んでいたけど、子供達が家を出て戻ってこないので、老夫婦だけでは広すぎるから、もう少しコンパクトな家で余生を送りたい。掃除も楽だし」など、家族の様態や構成の変化などの理由によって建て替えられるケースが多いのです。ネットで検索すると、同様の問題提起をしているページがかなりあります。詳細はこれらHPに譲るとして、そうした場合に、増築や改築などで住み続けることができるのに、今の家を取り壊して、新しい家に建て替えてしまうケースがかなりあり、そのような場合でも、「建物を取り壊した」としてカウントされてしまうわけです。実際に、ご自身の家を取り壊した方が身近にいらっしゃれば、きっかけを聞いてみると良くわかる場合も多いと思います。
こうした建物の取り壊し理由も含んだ上での「取り壊すまでの平均年数」を、木造住宅の寿命-つまり、家としての機能の限界-と誤解されている方が結構多いのです。そのアナウンサーもそうなのでしょう。中には、木造以外の構造の家を売りたいがために、意図的に「寿命」という言葉を使われる業界関係者もいます。とても残念なことです。
とはいえ、木造がもっと長持ちすることを「法隆寺は1000年以上も建っている」、「200年前に建てられた民家もたくさん残っている」などと例示するのも、事実ではありますが、話が少し違います。あれだけ太くて良質な木材をふんだんに使い、今では廃れかけている優れた木造技術を駆使して、現代において同じような品質の住宅をつくることは、なかなかできることではなく、今どきの木造住宅は、残念ながらそこまでの作り方はほとんどされていないのが実状だからです。
でも、そうした立派な木造建築でなくても、いくつかの点に気をつけていれば、50年~100年など、持たせることは充分に可能だと言われています。まず大事なことは、「家の手入れをきちんとすること」です。最近は、メンテナンスフリーといった言葉がもてはやされ、そう謳った建築部材も増えていますが、地球からの大きな重力に常に逆らい、太陽や風雨などの厳しい条件にさらされている建築物では、建ててからほとんど手入れが必要ないというわけにはなかなかいかないものです。特に日々のこまめな掃除、部屋の換気などを心掛けるだけでも、家の耐久性はかなり違ってくると言われています。また、雨漏りや湿気によるカビなど、木材は水分に弱いですので、発見したら早急に対処することが大切でしょう。その他には、地盤がやはり大事です。今は、住宅を建てるにあたっては、事前に地盤調査を行なうようになっていますが、地盤が弱いところに何の処置も施さずに建てて、家が傾くなどすると、建物に余計な負担がかかりますし、住むことにも嫌気がさして来かねません。私が子供の頃の実家がまさにそうでした。それとシロアリ対策は法的に義務付けられていますが、やはりしっかりしておかないと、構造体が直接傷みますので、家の寿命を短くしてしまいます。あとは、どうしても設備機器などは、構造体に比べて寿命が早いですし、仕上材も踏まれたり、さわられたり、ぶつかられたりなど、生活しているうちに傷んできますので、必要に応じて簡単なリフォームは必要になります。こうしたことなどに気をつけていれば、普通の家でも、30年など支障なく住み続けられるのです。
「みんな、車の手入れはするのに、何で家の手入れをしないんだろう?」と、専門家の間ではよく言われます。言い得て妙です。毎日車が走っているように、家も、自然条件や人が使用するという過酷な条件にさらされています。できるだけこまめに手入れをすると、家に対する愛着も増すものです。家を建てる際には、多くのお施主さんが一生懸命考えて、気持ちを込めて建てます。そうした建てた人や、建てた頃の気持ちをいつまでも忘れずに、長く家と付き合って行きたいものですし、そのために私も何ができるのか、頑張って考えて行きたいと思っています。
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