きれいな工場
今日は、とある工場の改修の仕事で、現地に行ってきました。この工場は、自分が良く通る道から見えるところにあり、普段から「何かきれいな工場だなぁ」と気になっていた建物です。改修の設計のために、今の建物の図面をお借りしたら、元設計は、スーパーゼネコンの鹿島だったようです。
工場は、建築的には「生産施設」と呼ばれます。生産施設の多くは、建物の中に、製造する製品に合わせた大きな機械が入れられ、その機械を使って、「いかに効率的に製品を生産できるか」を考えて建物が計画されます。また、その工場の建物のデザインなどは、製品の売上などとは直接関係ない場合が多いので(店舗などの場合は、そうは行きませんよね)、建物のコストダウンの面から、余計なデザイン的な装飾は極力控えられ、無機質な建物になる傾向にあります。工業地帯などを思い起こしてもらえれば、良くわかると思います。
この工場を「きれいな」というのは、工場なのにきちんとした装飾が施されているとか、建物が新しいなどの意味ではなく、「建物にコストを掛けづらいであろう状況の中で、できるだけのデザインをしている」と感じられるからです。例えば、外壁はALC(軽量気泡コンクリート)を横向きに貼っているのですが、製品の一般的な規格寸法である3mの長さのもので統一され、ALC同士の境目の目地が、等間隔で整然と並ぶように設計されてます。これは、一般の方にはなかなかわかりづらいかも知れませんが、そのようにするためには、壁の中にある構造体から、きちんと割付を行い、それに内部の間取りが合うようにしなければならいなど、思っている以上に大変な作業です。また、そうして並べられたALCの外壁に、形の良い窓がきれいに配置されています。窓の配置も、中の間取りと合わせることが求められるので、なかなか上手く行かないことも多いものです。こうしたことを考えると、コストを掛けないようにしつつも、決して良いデザインをすることをあきらめるわけではなく、条件の範囲内で、一生懸命きれいな建物を作ろうとの、設計者としての力強い意志が感じられます。ん~、さすがはスーパーゼネコンです。
こうしたことは、普段私たち建築に携わる者は普通に知っていて、多くの人がそれを実践していますが、一般の方にはわかりづらい面もあるためか、どうしても「まあいいや」となおざりにしてしまう方も多いのが実状のようにも思います。でもこうした部分での「きれいさ」は、一般の方でも、言われれば気がつく方も多いですし、こうした面に気を使っていない建物が隣にでもあれば「何か違うよねぇ」というのが良くわかるはずの部分です。
このように、気を使って設計された建物の改修であれば、コスト面などを考慮しながらも、決していい加減なデザインにならないよう、自分も頑張らなければ、と思わされます。
最近のコメント